きっと好き
「だって、悔しいよ。
一生懸命に生きたお母さんよりも
バイトも家事も頑張ったお兄ちゃんよりも
会社の可愛らしい同僚が隣に座っていてくれるだけの方が、お父さんの支えだなんて言われてさ……」
「………。」
「で、結局家から飛び出してちゃ話になんないよね…。」
「……ひかる」
“そんなことない”とか“ひかるは間違ってない”とかそんな薄っぺらな言葉ではなく
神谷は黙って私を抱きしめた。
「……気の利いた事は言えないけどさ、俺は、ひかるが傷つく所を見たくないよ。」
「………ありがと。」
そう言った瞬間に神谷の腕に力がこもった気がした。
なんか、ふわふわする。
石鹸の香りと、神谷の温もりに包まれて
私はそのまま目を閉じた。