きっと好き



なんか変な感じになってしまった平井君の背中を見送って、教室に入ると


「……?」


神谷が机の上に座って、携帯を握りしめて脱け殻のようになっていた。



「…神谷?」
って呼んでも反応はない。





最近、よくある。

神谷が悲しそうな、寂しそうな、苦しそうな顔をして何かを考え込む事。




でも、いつも「どうしたの?」って聞くと

「なんでもない」って力なく笑って誤魔化すんだ。











「…神谷、どうした?」

「………。」




返事が無いのは初めてのことで、どうしていいのかわからない。




……どうしよ。


と思って、とりあえず近くに寄ってみる。





「神谷?」

「あっ、…ひかる。おかえり。」





また、神谷は力なく笑う。





「…何、ボーッとして。」


「んー……。なんでもない。」


まただ。
なんでもない訳がない。








「………最近、神谷おかしいよ。
私でよかったら話聞くよ…?」




…違うな。
聞きたいんだ。私が。






すると神谷は私の手を握って




「ちょっとだけ…こうしてて、くれる?」




って言った。










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