【BL】知りたくない。
顔を洗うために眼鏡を外す。
冷たい水が目にしみる。
髪なんていつも適当だ。
“兄貴、終わったんだったら早く変われよ”
毎日聞く声。
僕はこの声が苦手だ。
後ろを振り向けば、自分より20センチ近く高い身長がそこにある。
僕は何も発しないでその場を発った。
弟の棗。
背が高く、切れ長な目が綺麗で小顔。その上、何でもそこそこ出来てしまう。
僕はそんな棗がコンプレックスだった。
周りから
“弟は出来るのに”
とか
“本当に棗の兄なの?“
と言われる日々。
挙げ句の果てには、棗に近づくために僕に近づいてくる者さえいた。
そんな状況でどうして人を信じられるのか。
人に心を開かない。
そんな人間になった。
そこからは早かった。
アニメのキャラは僕に劣等感を与えない。
アニメを見たり漫画読んだり…
幸せだった。
僕は“オタク”になった。