ふた恋~雨が上がれば~
「肌に悪いぞ」


裕也がレイラの煙草を取り上げる。


「隣で吸ってるんだもん。今更同じよ」


煙草を取り上げられたレイラが、不機嫌な声を出す。


「でも、まあいいわ。肌が荒れたら、撮影に影響が出るし。ねえ、瑠璃ちゃん」


そう言ったレイラが、私に向かって勝ち誇った笑みを見せた。


「ごめんね、瑠璃ちゃん。裕也、私に頂戴?」


「……。私が裕也の彼女だって……」


「知ってたわよ。裕也に教えてもらったもの。この前の撮影のとき」


レイラは、20代を対象とした大人ガーリー・カジュアルがテーマの女性ファッション雑誌の専属モデルで、最近はファッションショーやバラエティー番組でも活躍している、女の子の憧れナンバーワンのモデルさん。


実は私も、その雑誌の読者モデルをやらせてもらっている。


たまたま街でその雑誌の編集者さんに声をかけられて、「夏の着まわし」っていうコーナーに出てみない?って言われて、雑誌に出させてもらった。


その雑誌に写った私の写真がなぜか評判よくて、そのまま読者モデルという形でその雑誌に残らせてもらってる。


でもレイラは表紙を飾るような一流モデルだから、その雑誌の後ろのメイクページとかを担当している私とは顔を合わせる機会がない。


あったとしても、廊下ですれ違って挨拶をする程度だ。
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