ふた恋~雨が上がれば~
「君、名前は?」


窓の外に視線を向けたまま私にそう聞いてくる男の人。


「……瑠璃。宮沢瑠璃です」


「瑠璃、ね……」


私の名前を小さく呟いた男の人。


そのあと何か言っていた気がしたけど、声が小さ過ぎて聞こえなかった。


「あの、あなたは……」


「ああ、ごめん。君のこと聞いといて、俺のこと話さないのはいけないよな」


そう言って窓から離れ、近くにあったデスクの引き出しから何かを取り出した。


「俺の名前は、矢野慎吾(やのしんご)。フリーのカメラマン」


そう言いながら私に近づいて来て、さっきディスクから取り出したであろう名刺を差し出してきた。


「カメラマン……」


祐也と同じ職業だと思いつつ、名刺に目を通す。


そこには、職業と名前、連絡先が載っていた。


「カメラマン、珍しい?」
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