ふた恋~雨が上がれば~
ワンピースに着替えタイツを履き、もらった名刺をポケットにしまい、スエットを畳む。


ベッドを軽く整えて、洗面器におでこにのっていたタオルを入れてそれを右手に持ち、左手にスエットを持った。


お行儀が悪いけど、少しだけ開いていたドアに足を入れて体が通るだけの隙間を作り、寝室を出た。


「あっ」


廊下に出ると、寝室に戻って来ようとしたのか、矢野さんと出くわした。


「それ、頂戴」


「あっはい。ありがとうございました」


私の持っていた洗面器とスエットを指さされて、慌ててお礼を言って矢野さんに返す。


「おいで。コーヒー淹れてあげる」


そう言って少しだけ矢野さんが笑顔を見せる。


その笑顔に導かれるようにして、私は矢野さんに続いてリビングに入った。


「ソファにでも座って待ってて」


「はい」


黒いふわふわのソファに座って、グルッと部屋の中を見回す。


リビングとダイニングがひとつになってる造りらしく、私がいるリビングの部分には黒い二人用のソファとテレビ、床にはラグが敷いてあって小さなテーブルがあり、ダイニングの部分には二人用の食事をするためのテーブルがあって、その奥にはキッチンがあった。
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