ふた恋~雨が上がれば~
「それ、私の好きな味です」


コーヒーに砂糖1つとミルク1つを入れるのが、私のコーヒーの飲み方の定番。


「そっか。同じだな」


「えっ?同じ?」


「いや、何でもない」


また矢野さんが、コーヒーに口をつける。


私もコーヒーに口をつけて、お互い何もしゃべらない静かな時間が流れていく。


なんだかすごくこの状況に落ち着いてしまっている自分がいて、なんとなく不思議な気持ちになった。


そしてお互いのコーヒーが無くなるころ、壁にかかっている時計が静かなメロディーを鳴らした。


ハッとして時計を見ると、午前11時。


「あっ!」


今日も普通に大学の授業があることを思い出し、カップを持ったまま思いっきり立ち上がってしまった。


「矢野さん。ここってどこですか?」


「ここ?」


本当は一番に聞かなきゃいけないことを、今更ながら勢い込んで聞く。
< 23 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop