ふた恋~雨が上がれば~
それからその日のうちに、裕也と一緒におばあちゃんに会いに行き、一緒に住むことを伝えた。


私はまだ気持ちが治まっていなかったので、「一緒に暮らすことにしたから」とだけ伝えたら、おばあちゃんは「そうかい。じゃあ、出てけばいい」っておばあちゃんもまだ怒ってたみたいで、そんな返事だけ返ってきた。


裕也だけは、おばあちゃんに丁寧に頭を下げてたけど。


おばあちゃんと喧嘩した理由は、私がしつこくお母さんのことを聞いたから。


それまでお母さんのことを聞いても、「大人になったら教えてあげる」とだけ言われてはぐらかされてきた。


だから二十歳になって、さすがにもう教えてくれるだろうと思って聞いたら、また「大人になったら……」と言われて、言い合いになったんだよね。


でもおばあちゃんとは仲直りをした。


裕也と暮らし始めてホームシックみたいなのになっちゃって、泣きながらおばあちゃんに電話したら、「いつでも戻っておいで」って言われて、それから裕也と暮らしながらおばあちゃんのところにも帰るって生活をしてる。


まあ、それからお母さんのことは聞けてないから、結局今もどうしてお母さんが出て行ったかは分からずじまいなんだけどね。


「あれ?裕也出ないな……」


駅に向いながら裕也に電話をするも、何回コールしても電話に出る気配がない。


「おかしいな~まだ仕事中かな?」


裕也の仕事はファッション雑誌のカメラマン。


だから仕事の時間が不定期になったりして、家に帰ってくる時間がバラバラ。


そんな裕也だけど、今日は珍しく早く帰ってくるって言ってたんだけどな。
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