ふた恋~雨が上がれば~
全身の力が抜けて、持ってた鞄が肩からすり落ちる。


中に入っていた教科書が大きな音を立てて外に飛び出した。


「んっ……」


その音に反応して、裕也が寝返りをうつ。


「どうしよう?」


頭の中が真っ白になって、頭も働かないし体も動かない。


でもここにいたら、いずれ裕也かレイラが起きてしまう。


いや、起きてくれた方がいろいろ問い詰められるし、無理矢理起こした方が……。


「もう、訳わかんないよ」


一向に考えがまとまらなくて、自分がどうしたいか分からない。


「んっ……」


そうして動けないでドアの前でジッとしているうちに、裕也が目を覚ましゆっくりとベッドから体を起こした。


「あっ……」


そして私と目が合い、すごく面倒臭そうな顔をして、ベッドサイドに置いてあるテーブルの上にあった煙草の箱から1本取り出しライターで火を点け、ゆっくりとした動作で煙草を吸った。


フーと吐き出された煙が、天井に登っていく。
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