ある聖夜の物語《短》
子供達の夜
今は江戸時代だっけ?
思わずそう尋ねたくなる、まるで時代劇に出てきそうな立派な日本家屋。
初めて来たときはその立派かつ威厳のある佇まいに、ひるんでしまったけれど。
慣れとは恐ろしいもので、今では自宅気分でその敷地内に進入出来るようになっていた。
不用心にもいつも開けっ放しにされている門を堂々とくぐりながら、母屋ではなくこれまた立派な日本庭園の中にある、この家には不似合いな洋風の離れへと足を進める。
母屋の古くも立派な引き戸とは違い、新しいけれど簡素な木のドアを二回叩く。
だけどこの離れの主は物ぐさなので、ドアを叩いたところで開けてくれるわけがない。
「こんばんはー。お邪魔しまーす」
私は自分で鍵が開けっ放しになっている木のドアを勢いよく開けた。