ある聖夜の物語《短》

なんて謝ろうかと考えている私をよそに、タキは私を支えながらゆっくりと起き上がる。

完全に密着していた体が少し離れて、私はタキの膝の上で向かい合うように座らされた。

目の前にあるのは真剣な表情をしたタキの顔で、その表情にいたたまれなくなった私が少し俯いたとき。

「この酔っ払いが。お前、足にくるほうなんだから急に立ち上がるなよ。怪我でもしたらどうする気だ?」

表情と同じくらい真剣な声が耳に届いた。


「ごめんなさい」

それは誰が聞いても怒っているとわかるもので、私は小さな声でそう謝罪した。

タキは小さなため息を吐き出したあと、俯いたままの私の頭を宥めるように撫でる。

その動作はもういいよ、と言っているようで、ゆっくりと視線を上げてタキを見る。

その顔は予想通り呆れたように笑っていて、私は少しだけ安心した。
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