ある聖夜の物語《短》

そのままなんとなく笑っているタキの顔を見ていると、タキの表情がだんだんと居心地が悪そうなものに変わっていく。

その証拠に、タキはクロスのネックレスをずっと触っていた。


「タキ?」

首を傾げながらそう問い掛けると、タキは小さく体を揺らしながらその瞳に私を映す。

なぜだかその綺麗な瞳から目を逸らせなくてずっと見ていると、頭がボーッとしてきた。

それは瞳の中に映る私がだんだんと大きくなってきても変わらず。


気が付けば。
タキの綺麗な顔がすぐ目の前にあった。


近付き過ぎたせいで焦点が合わなくなって、お互いの顔で出来た影が視界を暗くする。

それが、駄目だった。
もう限界だった。

暗くなった視界をさらに暗くするために私は瞼を閉じて、そのままタキに抱き着いた。
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