【短編】アタシは商品

――TRRRR


呼び出し音が鳴る。


『はい……』


いつものこもった声の後ろに、ざわざわとした声が聞こえた。

今の時間は、夜の10時。


(そっか、マネージャーにもプライベートって存在するんだ)


初めて彼のプライベートについて考えた。


「あの……おばあちゃんが亡くなっちゃって……」


『え~……あ~……』

アタシの言葉に彼は、困った様な声を出す。


「どうしたら…良いですか?」


本音だった。
本当なら、アタシはおばあちゃんと一緒にいたい。

だけど、明後日からの仕事は自分がオーディションを受けて勝ち取った大きな仕事。

経歴的にも、この仕事を受ければ次のステップアップに繋がる。

事務所も、アタシが受かった事を喜んでくれていた……。


仕事をしたい!

だけど、おばあちゃんと一緒にいたい!!


薄弱かもしれないけれど。。。
アタシは、自分の意思で決めれ無かった。

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