君のことを想いながら
パンパンッ―


「静かにしなさい!!マオ様の挨拶があるのですよ!!」


一人の女性が大声をあげた。


新入生はざわついていたことが嘘のように席へつく。


「よろしい。その状態で待っていなさい。」


女性は僕と目が合った。


女性は僕を見てにこりと笑った。


きっと、ユルの泉で生まれたからなんだろう。


この養成所に入ったら、そんな目で見られてばかりかもしれない。


僕は、そんな不安を思いながら静かに待っていた。


「マオ様がいらっしゃいます。」


女性の声が静かに響いた。


妙に重い空気が流れる。


カツン、カツン―


後ろから足音が近づいてくる。

僕は、うっすらと汗をかいていた。


まわりのみんなもそうだと思う。


誰もが、背筋を真っ直ぐにしていた。
ただ一直線に前だけを見つめて。


カツン、カツン―


一人の男性が、檀上に上がった。


ひげを生やし、目元には深い皺がある。


それでいて、紳士のようだ。


「あー…、私は、挨拶をするのは好きではない。一言だけにしておく。
秩序を乱すな。
私の手を煩わすことのないように。以上。」


それだけ言うと檀上を下りた。


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