君のことを想いながら



俺は翼を広げる。


「あっ。
まだ、帰らないで!!もう少しいてよ。」


サキは俺の手を掴む。


「…帰らねぇよ。」


また筋肉が緩んでいく。


俺が帰ろうとすると、もう少し。とせがむ。


不安そうな顔は、見ていていいものではない。


でも、その表情が俺の存在を証明してくれる。


だから、わざとこうやってサキをからかう。


「…よかった。」


サキは安心したのか、詰まっていた息を吐き出す。


俺は、日が落ちるまでサキのところにいた。


そして寮に帰って一人考える。


一緒にいる時間が長いせいなのか―…


サキがキレイに笑うからだろうか―…


俺の心の冷たい場所が、温められていくのを感じている。


サキがいなくなるのは時間の問題だ。


いなくなったとき、俺はどうなるだろうか―?

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