暖簾 のれん
もう日も沈んで真っ暗だったが、泣きながらアクセルを踏んだ。

行き先は浮かばなかったが今はただ主人の顔なんて見たくないと思った。

昨日あったことはすべて現実。

夢でもなんでもなかったのだ。

これが普通の女性との浮気だったらまだ良いと思った。
どう転んでも彼と離婚しなくて済むチャンスだってあるのだから。
でも相手が男性の場合、これはもう叶いっこない。

 私は同性愛者を差別したりしない。
現にゲイの知り合いだっているし、どう生まれようと自分の持ってる性をあるがままに自分に受け入れて人生を進んでい姿は素晴らしいと思ったくらいだ。


だけど、それが自分の夫となると話は違う。

他の男性と主人の愛をシェアーして生きて行くなんてまっぴらゴメンだ。
こうなると私が辞退するしかないと思った。

いつの間にか私は有里の家の前に車を停めていた。

事情を知っているのは彼女だけだから自然にここに来てしまったのだろう。
でも家の電気は消えて真っ暗で有里の車はそこに無かった。


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