暖簾 のれん
「で?これからどうする?」

「うん、とりあえず離婚。あの男に熨し付けてくれてやるわ!」

「美朝子は?」

「うん、どうしよう??とにかくここに居たくない。親にもいずれ言わなきゃならないし、小さい田舎町だもの、噂になるよね。」
両親に報告せねばならないと思ったら胸が締め付けられた。


私は口いっぱいに煙を吸ってそのままぽっかりと吐き出してみた。
一度肺に入れるのではないので真っ白な煙の塊が目の前に広がった。

煙の中から有里のポーカーフェイスが現れて聞いた。

「未練は?」

「未練などあるもんか!私、ずっと騙されていたんだよ。」


「いや、それはどうかな?」
吸い終わったタバコの火を灰皿に押しつけながら有里は言った。


「いつから同性愛になっちゃったんだか知らないけど、私は美朝子と結婚した時は美朝子を愛していたと思うよ。だから今まで言えなかったんじゃないかな?」

「キレイ事よ。」

どんな言い訳も今の私には通用しなかった。

「有里、私ね。しばらく日本を出るわ。」


有里の目が驚いていた。


「まだ30前よ!人生をやり直せる。新しい自分を見つけに行ってくる。」
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