暖簾 のれん
アパートは飛行場からタクシーで30分ほどの海沿いにあった。
結構年期の入ったアパートだったが頑丈そうでプールもついてた。


310号室はエレベーターで3階、開いたすぐ目の前にあった。
大きなスーツケースを引きずって私はチャイムを鳴らした。

しばらく待ったが誰も出て来ない。

もう一度チャイムを押すと中から女性の声が聞こえた。


「誰?」

「新しい部屋の住人です。」

そういうとドアが開いた。

中国人系の私と同い年くらいの細い女の人が驚いて立っていた。


なぜそんな驚いた顔なんだろうか?
何だか嫌な予感がする・・・。


「では貴女がミサコ?」

「そうです。」

「まぁ中に入って。」

私は中に入れてもらった。
15畳くらいの居間が広がり、奥に台所が見える。
右に左にドアがいくつかあって、その中の1つの部屋が私の部屋だと思うとワクワクした。

が・・・・

「ミサコ、私がペイレイ。」
私が来る前にメールでアパートの貸し借りの契約をしたのはこのペイレイだった。


「申し訳ないんだけど、貴女が借りるはずだった部屋の女の子がまだ出て行ってないのよ。」

「えええええええ!!!!!!」

「今日までに出て行くはずだったんだけど。だから貴女の部屋はここには無いのよ。」
私は困った。到着後すぐに新たな問題が勃発だ。

この大荷物で宿無し?

先ほどの晴れた天気が一転、急にスコールが降り始めた。
まさにバケツをひっくり返したような雨+イナビカリ・・・

(このどしゃ降りの中をスーツケース持って出て行けってこと???)

私は固まった。

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