暖簾 のれん
ペイレイを迎えに来た白い車。
乗っていたのは彼氏のフォンだった。
特別ハンサムではなかったが、優しそうな人だった。
聞けばフォンとペイレイは10年も付き合っているらしくこうなるとなかなか結婚もいつしたらよいのやら切り出せずにいるようだ。

二人のお馴染みのパブは海岸沿いから少し入った所にあった。
椰子の木に囲まれた南国ムードいっぱいのオープンパブ。
波の音も聞こえる。

まだ早いのにお客さんもぼちぼち入っていた。

「何飲む?ビールで良い?」

「うん。」

日本で言う中ジョッキに並々とつがれたビールがテーブルに置かれた。

「ようこそペナンへ!!」3つのジョッキがカチャンと音を立てた。

日が暮れても蒸し暑いので冷たいビールが余計に美味しく感じられた。

「それで・・・。ミサコは離婚は分かったけど、どうしてマレーシアに来たの?」

「来たこと無かったし、誰も私の事を知らないから。」

「その初めての国の初めての友人が俺たちって事??」

フォンとペイレイが顔を見合わせた後に嬉しそうに聞く。

「そうだよ!巡り会いって不思議だよね・・・。」

少し酔いが回ってきたのか、ポンワカと良い気分になってきた。

聞けば体格の良いフォンは警備会社のガードマン。
ペイレイは銀行員、本当にお似合いのカップルだ。

酔ったせいか、私も結婚前はこんな二人のような甘い時期もあったな・・・と考えたりした。そうすると胸の奥がチクリと痛んだ。

(イケナイ!イケナイ!リセット!リセット!)

そう自分に言い聞かせた時だ。





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