暖簾 のれん
2人の後を追うようにしてパブを出た。
12時を過ぎているというのに海岸沿いの屋台にはいっぱいの人で溢れかえっていた。

「こんな時間に食事するの??」

「1日4食の人が多いわよ。朝・昼・晩、そして夜食。家で料理して食べるよりも安いのよ。」

毎日朝から外食だなんて・・・日本だと考えられない生活だ。

先ほどの日本人女性、可哀相にどうなったんだろう??そんな事を考えながら私たちはアパートに帰り着いた。

玄関を開けると、誰もいないはずなのに部屋に電気がついていた。

「あれ??電気つけて出たっけ?」ペイレイが首をかしげる。


私はチェンレイからもらったカギをドアに差し込んで回した。

(あれ?カギがかかってない。確かにかけて出たつもりなのに・・・)

建てつけの悪いドアを思いっきり引っ張るとものすごい音がして開いた。


「・・・・!!!」

中は電気がついており、背の低いマレー系の男が散らかった部屋でびっくりした顔で立っていた。



「ぎゃぁぁぁ!!!」



私は叫んでしまった。




「どうした?!!」とフォンが部屋に飛び込んできたかと思ったら、あっという間にその男を床に組み伏せた。

(流石は現役ガードマン!)

怖いのも忘れて感心していたらペイレイがその男にマレー語で叫んでいる。
フォンも同じくマレー語でその男に怒鳴っている。


私はさっぱり何が何だか分からなかったが、彼が泥棒だと言う事は明らかだった。

男は組み伏せられたまま、一言も喋らない。
二人の問いかけを無視するかのようだった。

ペイレイは私の部屋のはずだったドアを乱暴に叩いた。

すると中からやはり小柄なマレー人女性が恐る恐る出てきた。





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