暖簾 のれん
行き止まりになったままの数日間、膝を抱えて部屋に居た。
とにかく日本で捨ててきたあの事件を思い出さないように頑張ってみた。

有里が見たら驚くだろうと思う量の吸いがら。
モヤモヤを煙にして肺から外へ出していた。

その夜、ペイレイがチェンレイを迎えに行くというので一緒に車に乗った。
部屋でジッとしていても何も始まらないからだ。

チェンレイの働いてる店の名は『乙姫』
まさに竜宮城のような店でヒラヒラしたホステスたちがたくさんいた。
本当にタイやヒラメの舞い踊りの中に浦島太郎が(日本人)たくさんいる。

何だかここにいてはいけないような気がしたのでペイレイと一緒に外に出た。

4~5件隣の出来たばかりのオープン・バーに入ってみた。

「ビール、半分こしない?」
ペイレイは飲酒運転を恐れてか、私にそう言った。

「いいよ。」
私は気軽に返事した。

カウンターに2人で座ってコップをもらってジョッキになみなみと入ったビールを分けた。

「カンペイ!」(中国語で乾杯)
そう言ってペイレイは美味しそうに飲んでいる。

「今日はファンは?」
「夜勤だって。暇で仕方ないだろうね。ふふっ」

退屈そうに制服を着てガードハウスに座っているファンを想像できた。

「ふふっ」とそう笑った時だ。
大きく胸の開いた白いシャツを着たハンサムな中国系の男性が近寄ってきた。





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