暖簾 のれん
「いいじゃん、旦那と別れて男っ気無いんだから。」

「男っ気って、上物捕まえておいて!」

「分かんないよ。私は電話番号教えたけど、彼は教えてくれなかったもの。」

「電話、かかってくるよ。」ニヤニヤ

「もう!カンベンしてってばぁ!」

「ミサコって可愛い~~!」

散々からかわれてペイレイは出勤して行った。


(全くもう・・・・)

でも私の顔は笑っていた。

それから部屋に戻り、シャワーを浴び、出かける支度を念入りにした。

正午になった。

携帯はウンともスンとも言わない。

5分置きに、いや、もっと短かったかも。
私は携帯を握りしめて見つめた。

そうやっているうちにチェンレイが起きてきた。

「おはよう、ミサコ、キレイじゃん。どこ行くの?」

「わかんない。」

あくびして伸びをしたチェンレイはちょっと驚いたようで聞いた。

「なんで分かんないのよ?」

「電話無いもん。」

「あらあら・・・。そっか。」

「ジェフリーでしょ?ちょっとチャラチャラしてるもんねぇ、仕事柄。」

さっきまではち切れそうだった心の風船が一気にしぼむ思いだった。

(やっぱり・・・。)

チェンレイは携帯を片手に咥えたばこでトイレに入って行った。

私はなぜかここまで盛り上がっていたので諦めきれずにもう一度部屋に戻って携帯を見たが着信履歴は無し。

ここで買った携帯にはチェンレイ、ペイレイ以外の携帯の番号は登録もされてないし、かかってきたこともないので直ぐに分かるのに・・・

私は大きくため息をついた。

(チェッ!残念。)
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