化学室のノート【短編】
まるで小さい頃イトコに
罠を仕掛けたときのようだ。
わずかな、緊張。
気付くか、
気付かれないかドキドキして
なんとなくこそばゆくなるような、
そんな気持ち。
胸が緊張と興奮で静かに波打つ。
「……では、
今日の授業はここまで」
チャイムの音と同時に
みんなが席を立ち、
慌てて私も椅子から立ち上がる。
礼、という声とともに頭を下げた私は、
きっとこのクラスのなかで一番、この時間を楽しんだ生徒だ。