ツインテールの呪縛
生憎、何故だか今にいちゃんは名札を付けておらず、他のクラスメイトたちはにいちゃんが他学年であるということしか分からないようで眼を剥いている。
おそらくあたしとにいちゃんが特別な関係か何かと疑っているのだろう。
何しろ、あたしとにいちゃんはそこまで似てない。
『にいちゃん…!?』と、声を上げたのに聞かなかったのだろうか。
あたしは面倒くささをさして隠すことなく大仰な溜め息を吐いて席を立ち、教室の外へ出た。
教室を出てにいちゃんを見上げると、ニッコニコしていた。それはもう、厭味なくらい。はあ。
「今日、母さんと父さんが帰ってくるらしいんだ。」
「えっ、ほんと?」
驚いて、にいちゃんの顔を反射的に見た。
にいちゃんは嬉しそうに「うん」と言って頷いた。
あたしは廊下にサッと警戒の眼を走らせ、先生がとりあえずいないのを確認してから、ブレザーのポケットに突っ込んでいる携帯をそっと抜き出した。
見ると、赤いランプが点滅してメールの受信を知らせていた。
メールの受信ボックスを開くと、確かに『お母さん』からメールがきていた。
「『そっちの方に仕事が入ったから帰ります。たぶん家に着くのは21時頃になると思います。』…だって…!」
突然の吉報の嬉しさに、思わず頬が緩む。
にいちゃんはそんなあたしを見て優しく微笑んだ。
にいちゃんの笑顔は、何よりも安心する。
さっきの颯太先輩のことだって、もう気にならない。