死体
今日もこの世界は茶色く憂鬱だ。
長谷川は、スクーバダイビングをやると人生観が変わると言っていた。セピアな現実から離れ、青い世界に飛び込むのか、そして、黒眼勝ちのコザカナと戯れてはしゃぐのか。
しかし、この世界の海にそんな、かわいらしい魚は泳いでいない。大半は、目玉が三つ四つ有ったり、浮袋が剥きだしになっている。アジアのどこかに「青い海」なら残っているらしいが。


アズマは指先で腐食防止加工が施された透明なシート(厚さ3ミリ)をめくった。
女の足首がくっきりと確認できた。

アズマは正方形のガラス窓から差し込むオレンジ色の光のせいで、目を細めながら言った。


アズマ「白くて綺麗な足だな、ホントに死体か?」


古びた革ジャンを着たワカマツ検死官が答える。

ワカマツ「彼女の筋組織から八つのウイルス性の腫瘍がみつかりました。これは、完全死ですよ。」

アズマはシートを掴んだまま、ワカマツのほうに振り向き、口を動かす。

アズマ「ホントに、八つ?」


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