懺悔する恋人たち【短篇】
「苦しいか?」
女の長い髪を掴み、視線を交わすが既に女の瞳は茫洋と。
段々と色を失っていく口唇からは、言葉にならない呻きが洩れ続ける。
「……早く、逝けよ」
細い体躯。
その腹部に刺さる凶器をさらに埋めて。
愛し子をあやすようにやさしく髪を撫でながら贈る言の葉。
青白さを増した頬に一筋の滴が伝う。
「ぅッ……ぁッ……ッ!!」
びくびくと痙攣をする女の体躯。
ぬるり、と滑る手のひら。紅い水たまりが大きくなり、辺り一面に広がるは噎せ返るような鉄の臭い。