愛の奇跡。

忘れられる悲しさ。


それも愛する人に。


僕はまた涙が込み上げてきて、感情が高ぶって。


思わず、のぞみの肩を掴んで揺さぶっていた。


のぞみの整った顔が困惑して歪む。



「…ごめんなさい…本当に…私…何も解らない…。」



薄い茶色の瞳が、涙目になってる。


僕はハッとして、のぞみから手を離した。



「……ごめん、ごめんね…。ちょっとショックで…でも君の方がショックだよね…?」



忘れる方だって、きっと辛い。


目が覚めたら自分の事も何も解らないなんて…怖いに決まってる。




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