ダークエンジェル

「そうだった。
カイルはまだ狙われているんだよ。

昨日、カイルが眠っている時、
殺しを頼まれた看護師がカイルの点滴を摩り替えた、とか言っていた。」



が、2人が心配していると言うのに、

カイルは寂しげに笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。



「カイル… 」


「もう良いんだよ。
私は自分の目的を達成した。

こうしてリュウと… 高倉さんにも会えた。
話したかったことも話した。
十分だよ。」



そのカイルの人生をあきらめたような話し方。

それまでのカイルとは別人だ。

まるで心の闇に向って歩き出そうとしているようではないか。

そう、まさに、リュウたちがこの部屋に入り、
カイルと対面し、
医師がカイルの状態を話した直後のカイルに戻っていた。



「カイル、どうしちゃったの。
足の事を思い出して、心配になって来たの。」



リュウは、そんなカイルを見てとても不安を感じている。

日本で見たときのカイルは、
強いエネルギーを放出し、
全てに自信が感じられた。

だから、父の事ではとても不安なリュウだったが、

カイルの存在で、
その心細さから開放された気になったものだった。

いつも一緒にいられなくても、
この地球上にカイルがいる、
と思うだけで心が温かくなっていた。

それなのにこのカイルは… 

足を切り取らなければ命に関わる、とか言われたが、

それでも命と引き換えなら足の一本ぐらい、とも思えていた。

足Ⅰ本でカイルが助かるのなら、

カイルが生きていてくれるのなら、

自分の足を使ってもらいたいぐらいだ。

自分の気持ちが上手く伝わらない事に、

恐怖さえ感じているリュウだ。
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