ダークエンジェル
「カイル、君はソフィアの敵を討ってくれたのか。
皆、事故死や自然死になっているが…
君が…
私は今の君を見ていてそんなことが浮かんできた。」
父がいきなり3人しかいない病室だからか、
そんな言葉を出してきた。
その言葉に反応してカイルが悲しげな表情で父を見ている。
「そうなのか…
君だけに過酷な人生を歩ませてしまったんだな。
目の前で妻が殺されても、
大人の私は何も出来なかった。
しかし、君は優しいから、
敵を討ったと言って、
神に対して懺悔しているんだね。
それで君は人生を終わったように感じている。」
それはリュウにとっては想定外の言葉でしかなかった。
今の言葉は…
カイルが殺人者のようではないか。
「高倉さん… 」
「カイル、もうその名で呼ぶのは止めてくれ。
君は私の息子だ。
16年前から決まっていた事だよ。
書類を見ただろ。
かなり古ぼけてしまったが、
ソフィアが命がけで作った家族の証明だ。
ソフィアは悔しかっただろうが、
今頃は君やリュウ、
私の事を天国から見ていてくれる。
ああ、君がした事を喜んでいると思う。
彼女は強い人だった。
君を苦しめた奴を許しはしない。
体は消えても魂は健在だ。
君がどのような巧妙な手口で事を為したかは知らないが、
それは全てソフィアが望んだ事だよ。」
父がこんな事を言うなんて…
「カイル、私の事は
龍彦と同じように父さん、と呼んでくれ。
もし、そのことが公になり君が非難されるようなら、
私が罪をかぶる。
何も出来なかった私でも、
父親らしく、夫らしく振舞いたい。」
信秀のその言葉で…
それまでは目を合わさないようにしていたカイルだが、
驚きと喜びを一緒にしたような顔をして、
その声の主を見つめた。