ダークエンジェル
「父さん… リュウ…
すごく嬉しい響きだ。」
カイルはまた涙を浮かべた瞳で2人を見つめている。
その顔には吹っ切れたような、
新しいエネルギーが感じられる。
「ああ、私もカイルがこんなに立派になっていて…
私こそ、ソフィア一筋とはいえない生活をしてしまったが…
きっと、彼女なら笑って許してくれると思う。
ああ、やっぱり私がいないとこんなところね、って、
今頃は大笑いされているだろう。
いつも言われていた。
それがとても新鮮で嬉しかった。」
信秀もカイルの気持が伝わったように、
幸せそうな声を出している。
「いいなあ。
僕だけソフィアに会っていない。
悔しいなあ。
でも、いいや。
後で2人からゆっくりいろいろと聞かせてもらうから。
カイル、早く先生に手術をお願いしてよ。
まずは命の危険を取り除く事だよ。
病院にはいろいろな義足があると言っていたけど、
もし気に入らなければ、
僕が大人になったら、立派な技術者になって
特別なのを作ってあげるよ。」
聞き様によっては、
とてもこどもっぱい事を口にしているリュウ。
しかし、とても温かい響きに感じる。
「ああ、そうだ。
父さんたちはしばらく隣の部屋で寝泊りして
カイルと一緒にいる。」
「隣の部屋で…
この前、リュウが父さんにしたみたいに… 」
「ああ、実際の生活場所は異なっても、
いざという時は、家族なら当たり前だろう。
が、最長で9月の中頃まで。
私の仕事はどうにかなるが、
リュウは水嶋君と国体に出る予定だから、
少しは彼と練習をしなくてはならないだろ。
彼にはいろいろと世話になっているから、
リュウも出きる事は少しでも返さないといけない。
もし、2人が希望通り進む事が出きれば…
その頃、私とカイルは試合会場へ応援に行く。
家族とはそう言うものだ。」
「え、父さん、本当なの。」
今度はリュウが嬉しそうな声を出している。