ダークエンジェル
「変な女…
お前、何かされたのか。」
信秀もまた、リュウと2人なら、
リュウが幼い子供のように、応じている。
「別に… そう言うわけではないけど。」
「お前の事を気に入ったんじゃあないか。
格好良い子だなあ、と思われたんではないか。」
と、信秀はリュウをからかうように笑みを浮かべている。
「ちがう。そう言う視線とは違っていた。
その女,うちまで来ているかも知れない。
電車を降りてからもずっとついているんだ。」
「偶然ではないのか。
7時前だが、それでも外はまだ薄暗い程度だろう。
顔は見たのか。」
「うん、見たことのない外国人だった。」
「外国… アメリカ人か。」
「分らないよ。
とにかく髪と目は茶色だった。
でも… もう僕たちは狙われないんだよね。」
「そのはずだが… 」
そう話しながら信秀は立ち上がり、
玄関の方へ向かった。
昔から、息子の言葉を信じたかのように応じるのが信秀だった。
そして… 門扉の影にその少女はいた。
信秀が門扉を開けて少女に英語で話しかけた。
「私たちに何か用ですか。
どこかで会った事がありますか。」
「・・・」
「良かったら一緒に食事でもしますか。
私たちは今から夕食なのですよ。」
信秀は優しく話しかけている。
全く初対面の相手に、
いくら息子ぐらいの歳の少女でも、
そんなに気軽に食事に誘うとはあきれるが…
何かあったら飛び出そう、と思いながら
リュウは玄関から見ている。
「何か話があるのなら聞きますよ。
ここでは何だから、
せめて玄関に入りませんか。」