ダークエンジェル
信秀がそう言うと、
少女は、無言のまま玄関まで入ってきた。
やはり何か話があるようだ。
その様子を見た信秀は、
そのまま少女を玄関横に出来ている応接間に案内した。
そして食事の支度を終えた家政婦の野村さんに、
今日はご苦労様、と言って、帰ってもらった。
食後の食器洗いは、食洗機がしてくれるし、
リュウが中学に入るまでは、
信秀は自分のペースでしていたのだ。
「さて、君の名前は何ていうのかなあ。
私はここの主の高倉信秀、
こっちは息子の龍彦だよ。
16歳… 君と同じぐらいかなあ。」
「ノー、私は14歳です。
名前はドリー・ナチュラル。
本当はドートン・ハワードの… 」
と、ドリーと名乗った少女は聞き覚えのある名前を口にした。
「ドートンって… あの…
父さん… 」
一緒に聞いていたリュウは、
訳はわからないが胸騒ぎのようなものを感じていた。
「君はドートンの娘さんですか。」
ドートンには確か20歳と17歳の娘がいた、と聞いていたが…
信秀はそんな事を思いながら尋ねている。
「私が2歳の時、
ママがパパと喧嘩して…
ママはパパの愛人だった。
パパはおじい様が怖かったから
ママや私たちの存在を隠していて…
ママはヒステリーで
パパを困らせようと自殺した。」
はっきりはしないが、
この少女は半年前に亡くなったドートンの隠し子のようだ。
しかし、何故ここに…
どうしてここが分ったのだろう。
信秀とリュウは、
少し話してはうつむいてしまう
ドリーの次の言葉を待っている。
この様子では14歳のドリー、
一人で日本へ来たようだ。
それも、目的はこの高倉の家…
一体どうしてそんな事に、と興味が出ても不思議ではない。