ダークエンジェル
「おばあ様を助けてください。
私たちではカイルに会えないのです。
カイルに謝って…
許してほしいのです。」
ドリーと名乗った少女は、
怯えながら信秀を一心に見つめて、
涙を浮かべて哀願している。
「カイルに何かしたのか。
まさか、あの時…
カイルを殺そうとしたのか。
そんなの許せるわけが無いじゃあないか。
カイルが眠っている時に殺そうとしたんだろ。
許せるわけが無い。」
信秀が声を出すより先に、
断片的だが、
話が分ったリュウが叫ぶように応じている。
大切なカイルを狙った奴など許せるはずが無い。
リュウにとってはやっと会えた、
いや、父にとっても大切な息子のカイルを狙った奴だ。
リュウは、
自分たちにとってそれほどに大切なカイルを
狙った奴を許すなど…
そんな事を、自分たちに言ってくるドリーの気持も分からない。
「ドリー、君は私たちにそんな事を言うために日本に来たのかい。
わざわざ来なくても、
君がその人を止めれば良いだけじゃあないのかい。
君がどこまで私たちの事を知っているか分らないけど、
カイルは私たちのとても大切な存在なんだよ。
住む国は違っても心は結ばれているんだよ。」
信秀は諭すように、
一人でここまで来たらしいドリーに話している。
「でも… もう遅いのです。
カイルはおばあ様の仕業と知ってしまったのです。」
「自分を狙ったのが誰か、
知ろうとしても、当たり前じゃあないか。
自分のしたことを棚にあげて…
カイルを悪者のように言うのは卑怯だぞ。」
父のように穏やかな言い方の出来ないリュウ、
心のままに怒りをぶちまけている。
今までの16年間、
これほどに激怒の心を表わしたことなど無かったリュウ。
カイルを殺そうとした、
と言う言葉が頭を支配し、
目の前で怯えて涙を浮かべているドリーを見ても
優しくなんかしたくなかった。