ダークエンジェル
「リュウ、有難う。
僕の事、軽蔑しているんじゃあないのかい。」
「どうして。」
「だって… これからリーグ戦が始まると言うのに… 」
「確かに3年生は慌てていたけど…
お前がいるといないとでは雰囲気が違うからな。
僕は気にしない。
お前の代わりに石田が頑張るから、
良いんじゃあないか。
お前だって決心した上の事だったんだろ。」
「ああ… 部活の練習では… 」
「僕は部活しか知らないけど、
お前はプロになりたいんだろ。
信じる事をすれば良いだけのことだ。
その代わり、きっちりと結果を出せよ。」
と、まさにとても良い友人像を演じているリュウ。
山崎の事は、
昨日水嶋から聞いたところだから知ってはいたが、
それまではさして関心もなかった部員だ。
同じ2年生で二人とも同じように負け知らず。
他の部員はかなり意識しているが…
リュウは不思議なほど意識になかった。
リュウはただ無心になってボールを打ち返すことが楽しい。
それだけしかなかった。
が、こうして話をすれば、
出てくる言葉は、
絵に描いたような友情を匂わせるものになっている。
「ああ、これから1年頑張れば、
テニス留学生の枠に入れそう、と言われた。
フロリダにあるテニスクラブと提携しているんだ。
ああ、選ばれて、
そこの寮で暮らしながらプロテストに挑戦。
それから世界の強豪と、
初めは足元にも及ばないかもしれないけど、
頑張ってテニスプレーヤーとして生きていきたい。
そう思っているんだ。」
「すごいな。
もうそんなことまで考えているのか。」
リュウは素直に感心している。