ダークエンジェル

「リュウ、しっかりしろ。
俺がずっと一緒にいるからな。」



水嶋にはそんな言葉しか出せなかった。

ショックを受けたのは水嶋も同じだ。


実は… 初めに連絡を受けた時、

家に帰らなかったリュウをかばう形で、

クラブのミーティングの流れで話が盛り上がり、

まだ自分の部屋に集まっている、と言ってしまった。


それで急いで探しに出た。


昨日の様子では新宿の繁華街に興味を持ったようだった。

行くとしたら定期が使える新宿界隈だろうと察しはついていた。

そして、親父さんたちは迎えに来がてら… 

多分親父さんが、夕食をうちの店で、と言い出したのだ。

親父さんはそれほど高校生になっていてもリュウが可愛いのだ。

あの義母さんは家を知っている。

車の運転もあの人だ。

隣で震えまで出して呆然としているリュウの肩を抱きながら、

水嶋こそ震えていた。


病院の集中治療室。

信秀は体中にチューブが付けられ… 

側に置かれた医療器械の針が微かに動いているから、

まだ生きている、と言う感じ。

いつ止まるかわからない、と言う微妙な段階と言われた。


同じように重態だったのぞみは、

リュウたちが到着する直前に
息を引き取った、ということだった。

それだけ事故の衝撃が大きかったのだ。



「お父さんは誰かに恨みを買っていたとか、
狙われるような事はありませんでしたか。」



部屋の隅に置かれたソフアーで

怯えたように座っているリュウのところに、

警察官がやってきてそんなことを聞いてきた。
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