ダークエンジェル
が、夜中に電気がつき、何か声がすれば…
巡回している看護師がノックして入ってきた。
カイルはそのノックの音ですばやくリュウの部屋に隠れた。
「どうかしたのですか。
こんな時間ですから病室の電気は落としてください。
お部屋の方は構いませんけど。」
「すみません。
あの… 今思いついて父の足をマッサージしようとしていたのですが… 」
無意識だったが、リュウは今、
カイルに聞いたマッサージ、と言う言葉を出していた。
「あら、それは良い考えですわ。
マッサージしながらお父様に話しかけて差し上げたら、
回復も早くなるかも知れませんわね。
でも、明日も学校でしょ。
今晩はこの辺でおやすみなさい。」
看護師は母親のように優しい口調で話し、出て行った。
「はい。おやすみなさい。」
「マッサージは良い事らしい。
それなら僕がする。」
リュウは言われたとおり明かりを落とし、
自分の部屋に入った。
カイルはリュウのベッドに腰を下ろしている。
何か話をしようとしているのか緊張しているのが分かる。
「リュウ、これがソフィアだよ。」
そう言って、
カイルはいきなりリュウに古ぼけた写真を見せた。
そこには、
5・6歳の可愛い少年と美しい女性が写っていた。
が、何故か今にも破れそうなほどしわくちゃで色あせている。
「ソフィアって…
僕の母さんも… 」
「そう、その母さんだよ。
私はママと呼んでいた。
それとこれも… 」
と、見せた写真は、
そのソフィアが妊娠して、
少し目立つおなかで幸せそうに微笑み、
父・高倉信秀を見ているものだった。
「これは… 」
「そうだよ。高倉さんとママ。
このおなかの中にはリュウがいるのだよ。
とても良い顔をしているね。
この写真が私の宝物。
絶対に見つけられないようにしていたから、
こんなに惨めになってしまった。」
カイルは泣き笑いのような表情をして、
リュウに見せた写真を愛おしそうに見つめている。