ダークエンジェル

リュウは家まで来ると立ち止まり、

庭にあるスティール製の倉庫の中にかばんとラケットを突っ込み、

そのまま、また駅へと向かっている。

家は杉並で学校は新宿、そこまでの定期はある。



リュウは制服を着ていることに抵抗を感じたが、

どうしようもない事に戸惑う事は止めようと、心を入れ替えた。

こんな風にひとりで夜の街を歩くのは初めてだったが、

夜と言うのに一向に暗くならない、

その雰囲気に興奮を覚えていた。


ただ歩いているだけだが、
神経が暴れ回っているようで… 

はっきり言えば、
それまでの沈んだ気持が消え、

自分ではないような気持ちになり、
楽しく感じられた。

自分と同じ年頃の青少年が、
何をしているのか… 
沢山いた。

そして、自分が空腹だった事を思い出したリュウは、

目に付いたマクドで、
ハンバーガーをふたつとコーラを買った。



「兄ちゃん、美味いかい。」



リュウが、
占い師が店を出している近くのベンチに座って食べていると、

派手な衣装を着た占い師が声をかけてきた。



「僕ですか。はい、腹ペコでしたから。」


「そうかい。後で占ってあげるよ。」


「いえ、そんな金は… 
それに僕、占いなど… 」


「何を言っているのさ。
最近は兄ちゃんのような高校生が関心を持っているんだよ。

金なんて良いよ。
兄ちゃんの顔には珍しいものが浮かんでいる。

ね、私に占わせておくれよ。」



と、くどく頼まれ… 

リュウは断る理由があるわけではない、と考え、

ただと言うなら占ってもらうことにした。

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