ダークエンジェル
「リュウ、分かったか。

一応チョコレートは警察に渡したが、
どうせ、犯人など突き止められやあしない。

とにかく、俺たちの存在を邪魔に思っている奴がいるのは確かだ。

それを肝に銘じておけよ。

まあ、お前は今のように見舞いが来ても
簡単に口にするな。
それ以外では… 大体大丈夫だ。」


「じゃあ、先輩は。」


「俺か、俺はこれでも喧嘩は強い。

大丈夫だ。」


「ふーん。僕だって空手は強いよ。」



リュウも山崎を助けた事を思い出している。



「お前が… 
まあ、そう言うこともあるだろうが、
とにかくお前は、夕方病院に戻ったら朝まで外へ出るなよ。

じゃあ、今日は帰る。
明日は9時集合だ。

会場まで後援会の人がバスで送ってくれるらしいから、
遅れるなよ。
昼食も出るらしい。」


「ふーん。すごい待遇だね。」


「ああ、こんな事は学校始まって以来、とかで、
急にテニス部の卒業生だった人たちが集まって応援団のようなものが出来ているらしい。

まあ、俺たちはできることをするだけだが… 

フフッ、悪い気はしないな。」


「うん、しないね。
じゃあ、明日は優勝を決めなくちゃあいけないね。」


「ああ、お前がトップで出て楽勝すれば、

俺たちは気分が良くなって素直に続くってもんだ。

リュウ、華麗なテニスで行くぞ。」


「はい。
先輩、いつも有難うございます。」


「馬鹿、今頃何を言い出してるんだ。」


「だって… 僕… 
父さんは眠ったままだし… 
本当はとても心細い。

先輩がいてくれて、
テニスに誘ってくれて… 

今までそんな事をしてくれた人は誰もいなかった。

友達は父さんだけだった。

中学に入って、
石田に誘われテニス部をのぞいて… 

先輩がいろいろ教えてくれたから… 

僕、上手くなったのでしょ。

僕、本当は先輩が卒業するのは嫌だと思っている。

でも、それは言ったらいけないことでしょ。

だから僕、先輩の夢に付き合う。
今、はっきりと、そう思った。

先輩、明日は優勝しましょうね。」
< 54 / 154 >

この作品をシェア

pagetop