ダークエンジェル

リュウは言葉通り、
地区大会の決勝戦で
最短時間のストレート勝ち。

それも、目を見張る様な華麗でシャープな動きを見せ、

あとに続くテニス部員の気力にも貢献した。

勿論、それは、
裏を返せば相手チームの気力消滅、
実力云々よりも、
直前に見た、リュウのプレーが頭から離れず、

応援席にリュウの姿があると言う事で集中力が欠け、

自滅的なミスまでも出てしまい… 

6回戦まであるのだが、
決勝戦では珍しく4回で優勝を決めてしまった。


初めての地区優勝、
部員が興奮して喜ぶのは当たり前だが、

今回は学校側やにわか仕立ての後援会が大騒ぎをして

選手たちを歓迎してくれた。

とにかく私立曙高校、

運動と言えば、野球とサッカーがたまに良いところまでいき、
騒がれてはいたが、
テニス部にいたっては
地区大会で3戦目ぐらいまで行けば良いところだった。

それが… 
この春から何となく雰囲気が変わったようだが… 

まさか、こんなにすんなりと地区優勝してしまうとは。

これが喜ばずにいられようか、
と言う様な素直な気持ちの応援。

女子テニス部部員たちも応援に駆けつけ、
当然のような顔をして
一緒に後援会からの差し入れを口にしている。



「リュウ、すごかったよ。
ああいう戦い方なら負けなしだね。」



北村かおりが、
水嶋の隣で差し入れのご馳走を食べている
リュウのところに来て、
押しのけるような形で割り込んできた。

リュウが珍しく、
北村かおりとは話をすることは
部員は皆知っていた。

親しい友達、と言うのではないが、

かおりが美人系ではなく、
ただ健康的なテニス部員と言うからか、
誰が見ても今回のヒーローで、
可愛い容貌のリュウ、

かおりと話しても誰も何も感じないらしい。

本来なら女子テニス部部員、

何がしかのジェラシーを感じても不思議はないのだが… 
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