ダークエンジェル

「リュウはまだ病院なの。」


「うん。父さんが起きないから仕方がない。

今の暮らし… なかなか悪くない。
先輩が弁当を持って来てくれる。」


「ふーん。水嶋部長ってリュウに優しいんだ。」


「うん。弟みたいって言ってくれた。」



そう言いながら、
副部長の吉野となにやら話している
水嶋の横顔をチラッと見たリュウだ。



「そう、羨ましいわね。

ああ、そう言えば、昨日、すごいチョコレート、もらったでしょ。

豪華なリボンなどついていたの。
あれ、どうしたの。
もう食べちゃった、なんて言わないでよね。

私にもおすそ分けしてほしいものだわ。」



いきなりかおりが昨日のチョコレートを持ち出してきた。

そう、あの毒チョコレートだ。



「何。おい北村、
お前何故そんな事を知っているのだ。」



リュウより先に、
吉野と話していたはずの水嶋が
いきなり2人の会話に割って入った。



「そうだよ、かおり。
お前何故そのことを知っているんだ。」



リュウも同じような事を言っている。

その2人の反応に、
初めは戸惑ったような顔をしたかおりだが、

すぐに気持を切り替えたようだ。



「なんですか。水嶋部長まで。

まさか2人で食べようと、
もう分けてしまったとか… 

分かりました。冗談です。
今のは取り消します。

どうぞ高級チョコの味を楽しんでください。」



かおりはわざとらしく、すねた言葉を出している。



「違うよ、かおり。
そんなものをもらう心当たりがないんだ。」


「当たり前でしょ。
アレはリュウのではないのよ。
アレはお父さんへのお見舞い。

チョコレートは腐らないから、
いえ、冷蔵庫に入れておいたほうが良いかも知れないわね。」



何も知らないかおりは、
2人の思惑など関係ない、と言う顔をして、

お姉さんのような言葉を出している。



「違う。
俺たちは何故お前がチョコレートの事を知っているのか、
聞いているんだ。」

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