ダークエンジェル
占い師に生年月日から聞かれ、
手相も見られ…
さんざん顔を見つめられた。
「やっぱり…
兄ちゃんは訳ありの星の下に生まれているね。
その内に新しい発見があるかもしれないよ。
いくら混乱する事が起こって
も兄ちゃんは兄ちゃん、
しっかりと自分の足で立って行くんだよ。」
と、訳のわからない事を言われ…
リュウは占い師に礼を行ってその場を離れた。
占い師なんてあんなものだ、と思いながら…
「おい、リュウ、
こんな時間にこんな所で何をしているんだ。」
その声で振り向くと、
テニス部の部長・水嶋健史が寿司桶を手に立っていた。
「水嶋先輩…
何をしているのですか。」
「馬鹿、こっちが聞いているんだろ。
俺は店の手伝いだ。
ああ、すし屋だから寿司の配達だ。お前は… 」
「あ、あの、僕は散歩です。」
夜の新宿の繁華街、
散歩とはよく言ったものだ。
「お前、そんな格好で…
何かあったのか。
ちょっと待て、
これを配達し終えたらすぐ来る。
ここを動くなよ。」
そう言って水嶋、
言葉とおり、すぐに戻って来た。
「それで、何があったのだ。
家庭内のトラブルか。」
この水嶋こそ、
リュウという名の名付け親、
中学時代からリュウのことを気に入って、
テニスは初めてのリュウに
何かとアドバイスをしてくれていた先輩。
リュウも気に入っている先輩だ。
「別に… 言うほどの事は何も… 」
「そんなわけはないだろ。
まだ学生服など着てるじゃあないか。
家に帰らなかったのか。」
水嶋は新入生として、
テニス部でリュウを見た時から、
まだ小学生のような子供っぽい雰囲気のリュウが気になっていた。
運動など無縁のような雰囲気だが、
教えれば覚えは早く、
すぐにマスターする。
力など無さそうなのに
サーブもシュートも…
鋭いものを出す。
特に高校生になってからは身長も伸び…
輝いてきた。