ダークエンジェル
聞いても仕方がない、と思っていたリュウだったが、
聞えた言葉に、
無意識にオウム返しに言葉を出していた。
あのチョコレートに使われたのが青酸カリ、
ということも今初めて分かった。
「それで我々としましては、
こんな言葉はまことに残念なのですが、
あのチョコレートの件は、
被疑者死亡、ということに… 」
確かに犯人らしき女が死んでしまっては、
どうしようもないのかも知れない。
それにアレを送られた高倉家サイドは、
幸いにも被害は出ていない。
被害を受けたのは金魚1匹だ。
犯人の意図は分からないが…
これ以上の捜査は難しい、ということになり、
その由をこうして報告に来たようだった。
「ニューヨークでは、
新たに殺人事件として捜査が始まっているようですが…
経過報告はしてくれるそうですから、
関係ありそうなものはお知らせします。」
そう言って刑事たちは帰っていった。
ナタリー・ミューズ…
絶対に聞いた事のない名前だ。
母のソフィアは生きていれば46歳、
父さんと同じ60歳でも、
絶対に、昔の女、と言う事はない。
カイルがいれば…
何か知っているかも知れない。
でも、カイルの名前がハワードと言う事しか知らない。
どこに住んでいるのか、どんな仕事をしているのか…
あの時は急だったから、
ただソフィアの写真を見せてもらっただけで、
分かれてしまった。
せめて連絡方法だけでも…
今頃のビジネスマンなら携帯電話は必需品だろう。
聞いておけばよかった。
本当にいきなりだったが、
無性にカイルが恋しくなり…
カイルの事を何も分からない、自分が腹立たしかった。