ダークエンジェル
「分かった。嬉しいなあ。
そんなところが近くにあるなんて…
僕たち、運が良いね。」
「まあな。
俺はあまり神頼みは好きではなかったが、
だけど今日は特別だ。」
と言っている水嶋だが、
実際は今日に至るまで思い出したこともなかったのだ。
とにかく試合開始は11時。
まだたっぷりと時間はある。
が、リュウが水嶋の後をついて、
その弁財天と言う神様のところへ行く途中の事だった。
水嶋は、店の裏、と簡単に言ったが、
実際は店の通りからいくつかの路地を通り抜けている。
東京副都心と言われる新宿でも、
大通りから少しはずれればこんなものなんだろう。
ほとんど車の通らない細い道だったが、
バイクや自転車は走っていた。
「意外と遠いんですね。」
イメージと違ったリュウ、
素直に声を出している。
「なあに、もうすぐ見える。
だけど、リュウ、お前何か感じないか。
どうもさっきから、なにやら気配を感じる。
誰かに見られているような… 」
水嶋が神妙な声を出した。
「僕も何か感じるけど…
だけど見渡しても何もない。」
「ああ、そうだよな。
まあとにかく、早く願い事だけしっかり頼んで… 行こうぜ。
ほら、あそこだ。」
2人は目的を果たして、心も軽く、
集合場所となっている学校へ向っている。
全国大会に入ってからは、
それこそ学校関係者や
テニス部OB、後援会の人たちが盛大に応援してくれ、
昼食は勿論、
毎回小型バスで会場まで乗せて行ってくれる。