ダークエンジェル
前はカイルが抱きしめようとしたら、
思いっきり避けたリュウだったが、
今は心のままに、
まるで幼い子供のように、
自分より長身のカイルに抱きついた。
「リュウ… 」
リュウのその行為に…
カイルは全てを察知しているかのように、
優しく抱きしめている。
リュウはいつまでもカイルの温かさに包まれていたかった。
こんな感情は初めてだったが、
それは紛れもなく心の底から沸き起こった、
自然の感情だった。
父は… 愛情表現が下手だったのだ。
カイルの抱擁は…
この3ヶ月の病院生活の不安定な心細さを全て溶かしてくれる。
「リュウ、大丈夫か。」
しばらくして、
カイルは優しい口調でリュウに声をかけてきた。
「あ、ごめんなさい。
僕… どうしちゃったんだろう。」
そう言いながらリュウは慌てて涙をぬぐった。
「なあに、なれない生活をしているから感情が不安定になっているんだ。
気にする事はないさ。
私ならいつでも胸を貸す。
だけど、あと少し… 我慢してくれ。」
カイルはリュウのわからない事を口にして、
苦しげに笑みを浮かべた。
「我慢… 何の事。
それよりも父さんが狙われた。
カイル、何か心当たりはない。
父さんに聞くのが一番だろうけど、
父さん、まだこのままだから。
カイル、ナタリー・ミシューズという60歳の人、知らない。
僕は一度もそんな名前は聞いた事がない。
父さんは起きないし…
その人、毒チョコレートを送ってきた。
幸い僕たち、あ、先輩と2人で、
被害は出なかったけど… 」
リュウは思い出すことをカイルに全て話そうと、
モザイクを組み立てるような話し方をしている。
いつものリュウは消えていた。