ダークエンジェル
「龍彦、そんな言い方はするな。

お前が嫌っていたのは分かるが、
骨になってしまえば皆仏さまだ。

父さんは楽しかった。
ああ、確かに初めは… お前の事は気になったが、

こうしてお前には水嶋君が出来たじゃあないか。

考えてみれば、父さんはそれが一番だと思っている。

ああ、龍彦にとっては独立心が生まれたのだから、
父さんはそれが嬉しい。」



「だけど… 」


「でも、おじさんは義母さんのこと、
どのぐらい分かっていたのですか。

結婚届けを出す時には戸籍がおかしい、とは思わなかったのですか。

すみません。よそ者の僕がこんな事を… 

でも、あの時、刑事が病室に来て… 
リュウが知らない、と言うのに
しつっこく聞いてきたものですから。」


「思ったよ。
だけど私は気に入ってしまった。

反面、龍彦は異様な反発を見せたけどね。

25歳も年上、
12歳の子持ち、
冴えない国文学をしているような男に、
愛だの、恋だのなんていう言葉、

初めは不信感でいっぱいだったよ。

だけど、その内に、その響きに酔ってしまったのかなあ。

昔、ソフィアと出会った頃を思い出してしまった。

そう、顔を見るたびに感じる胸の高鳴りって言うのかなあ。

元々自分には縁のない感情、と思っていた。」



信秀はリュウをチラッと見、
苦笑しながら水嶋に話している。



「本当に愛して結婚したのですね。」


「戸籍の事は知っていた。結婚する前から… 」


「それで弁護士さんに… 」


「まあ、私と龍彦とはかなり年齢差がある。
私に何かあった場合の事を考えた。」


「じゃあ、遺言書に何を書いたの。
遺言だなんて… 」



リュウがいきなり声を出した。



「ああ、それで怒っているのか。

まあ、今となっては言う事も無いが… 
かずらたちの事だよ。

私に何かあったら、
お前にあの2人を頼んだんだ。」


「でも、おじさん、
あの2人は義母さんの子供ではないかも知れませんよ。

出生届がどこにも出ていなかったって言う事です。」



水嶋も知りえた知識を出している。

< 84 / 154 >

この作品をシェア

pagetop