ダークエンジェル

そうか。それで父さんは… 

リュウは、いきなりニューヨークへ行く、と言い出した
父の気持ちが分かってきた。



「ああ、まだ若いが、なったようだな。

腹違いの兄が3人いるからいろいろあったらしいが、
それでも跡を継いだんだな。

まあ、無事で良かった、と言いたいが、
こんなところで重傷とは… 
何としてでも回復してほしい。

それにしても爆発物とは… 
今も言っていたが、薬中毒になると、
思っても見ないようなことを平気でするらしいな。

自社ビル、それも自分の居場所だったところに爆発物など仕掛けて… 」



と、父はソージャという次男を非難するような言葉を出している。



「じゃあ、ソフィアってその財団の会長の奥さんだったの。」


「いや、妻ではなく… 
ソフィアはとても有能な経済学者で科学者だった。

彼女の能力を手放したくないためにガクト・ハワードはソフィアを力づくで… 

それがカイルだ。

あいつは名うての女好きで、
長男が3歳になった時、その母親を放り出し、
新しい女と結婚した。

次男が生まれてすぐにまた妻を代えた。

よほど優秀な弁護士を雇っているらしく、
離婚してもまともな慰謝料も払わなかったらしい。

3男の母親はかなり続いたらしいが。
それでもソフィアが現れるまでだ。

ソフィアはそんな男と結婚する気は全くなかったが、
ああ、彼女は心の強い知的な人だった。

だから余計に、ガクトは生まれたカイルに執着した。
5歳までにIQが並ではない、と言われたらしい。

それでソフィアは5歳のカイルを連れて逃げ出した。」


「カイルと一緒に。」


「ああ、母親が子供を置いて行くなんて考えられない。

しかし、ハワード財団の本宅はとてつもなく広く、
大勢の警備が配置されていた。

何度も見つかったらしいが… 
それでもあるとき成功して、
そう、父さんと出会った。」


「それがボストンなの。」



父はここに来てソフィアとの馴れ初めをリュウに聞かせ始めた。
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