いのり
最高の洋服をクローゼットから取り出し、
髪もいつもより丁寧に巻き、
慣れないながら、少し張り切って化粧をする。
今日はなんだかいつもより特別な日になる気がしたから。
時計を見ると、
あと5分で迎えにくる時間。
ソファに座り、
ハルが来るのを待つ。
ピンポーン
11時になった瞬間
聞こえてきたチャイム。
ドア越しに
『ハル?』と聞くと
「芳田晴貴です」
と、「初めまして」でも続くような言い方。
声でわかる、ハルの姿。
ドアを開けると、
そこにはいつもよりかっこいいハルがいた。
「なんか気合い入ってない?」
『えっ!?いつも通りだよっ』
「…なぁんだ」
『?』
「俺のために気合い入れてくれたのかと思っちゃった」
少し顔を赤らめながら言うハル。
知ってた?
あたしが、ハルの言葉ひとつひとつに
ドキドキさせられてること。