いのり
背中
知らない駅で降り、初めて踏み入れる街に心を躍らせる。
『すごくいいところだね』
「俺が好きなところなんだ」
ハルの好きなところ。
あたしも好きになれたらいいな。
「腹減らない?昼飯行く?」
『…うん。お腹すいた!』
「よっしゃ」
ハルは小さな声でそう言い、
右頬をくいっと吊り上げてから
あたしの腕を引っ張って歩き出した。
『ハル?どこ行くの?』
声が大きくなった。
どんどん突き進むハルの背中に聞こえるように。
「めっちゃうまい店!」
『えっ?』
「沙羅に、食べさせてやりたいって思ってたんだ!」
ほら。
ハルは平気でそんなこと言っちゃうんだ。