いのり
『…どうして?』
「頭おかしいんだ。俺の親父」
聞ける。
「あいつ一人のせいで、妹も母親も、今までずっと苦しかったんだ」
聞け。
今なら聞ける。
ハルの、お父さんの事。
「あんな奴に、二度と父親面なんかさせねえ」
聞け
聞け!!!!
『……そうなんだ』
「突然こんなこと言ってごめん」
『ううん』
「なんか、沙羅になら話してもいい気がしたんだ」
ぎゅっと
こぶしに力を入れる。
『ありがとう、話してくれて』
今、あたしは上手く笑えただろうか。
ハルも笑って返してくれた。
でも、
その笑顔はどこか寂しそうで、
悲しそうで。