いのり



『…どうして?』



「頭おかしいんだ。俺の親父」




聞ける。




「あいつ一人のせいで、妹も母親も、今までずっと苦しかったんだ」




聞け。


今なら聞ける。

ハルの、お父さんの事。




「あんな奴に、二度と父親面なんかさせねえ」




聞け



聞け!!!!






『……そうなんだ』



「突然こんなこと言ってごめん」


『ううん』



「なんか、沙羅になら話してもいい気がしたんだ」




ぎゅっと

こぶしに力を入れる。




『ありがとう、話してくれて』



今、あたしは上手く笑えただろうか。


ハルも笑って返してくれた。

でも、

その笑顔はどこか寂しそうで、


悲しそうで。



< 45 / 52 >

この作品をシェア

pagetop