いのり
『ハル?』
ハルが突然、足を止めた。
「…ここ」
「……あ、思い出した。こっち」
独り言のようにそう言って、
ハルはまた進み出す。
そして、
ある建物の前で立ち止まった。
そこは廃墟となったビル。
『…ここ、立ち入り禁止だよ?』
ハルは立ち入り禁止というプレートがかかった鎖をまたぎ、
建物の中に入っていく。
『入って平気なの?』
「大丈夫!」
続いてあたしも入り、
ハルに手を引かれ、非常階段を上っていく。
どれくらい上っただろうか。
階段が終わると、
息を荒くしたハルが
「ビックリすんなよ」
そう言って
勢いよくドアを開け放った。